作画を二人で語ろう(仮)
最終回『平成ルパン』

くま
折角だからテレビスペシャルとかも少し触れておきましょう。
1989年の「バイバイ・リバティー・危機一発!」から「くたばれ
!ノストラダムス」「DEAD OR ALIVE」の二つの劇場作品を挟み、
「盗まれたルパン」(2004年現在)に至るまで濫造されているテ
レビスペシャル。基本的にストーリーやら作画やら主役の演技力や
ら何かと問題があり、平均水準が低いのですが、それでも見所は探
せばあるわけで…。

池本
最初に念を押しときますけど、はっきり言って僕は「バイバイ・リ
バティー・危機一発!」以降の諸作品…つまり平成に入ってからこ
っちの「ルパン」て事になりますが、それらをとにかく『一切』評
価してないんで、この辺の作品を贔屓にしてる方にとっては、愉快
でない事ばかり喋る事になると思うんですが…まぁ、嘘をついても
仕方ないんで(苦)

くま
今までの名作でも切るところはバッサリ行ってるので、テレスペの
場合たまたま切るところしかない、という感じで割り切って行きま
しょう。
例によって作画関連中心に摘んでいきましょうか。作品自体が優れ
ていると言うものは殆ど無く、やはり「あの作品のあのシーンの出
来が良い」みたいな言い方になってしまうのはご容赦していただき
たいところです。
初期の出崎統監督作品で、まぁそこそこ評判が良いのは、古瀬登作
監の「バイリバ」「ヘミングウェイ・ペーパーの謎」でしょうか。
特に「バイリバ」は悪くないんじゃないですか?アクションでも結
構動いてるし。出崎作品の特徴であるハーモニー処理(劇画チック
な絵にOLするアレ)、3回PAN、マルチ、波ガラスなど、特徴的な
画面作りは健在です。これが「ロシアより愛をこめて」とか「ハリ
マオの財宝を追え!!」のように乱用されてしまうと、ウザいだけ
ですけど。

池本
僕は古瀬登を全く買ってないですね。ハーモニー処理だとか三連続
PANだとかの出崎統独特の演出にしたって、あれ杉野昭夫のような
スタイリッシュな画風だからこそ映えるわけで、言っちゃ悪いけど
元々の作画がフラフラなとこへ何をやったって見苦しいだけであっ
て。言葉は悪いけど…ブスが厚化粧してるような見苦しさしか感じ
ないですね。
ただ。初期の出崎統監督作の中でも「ヘミングウェイ」「ナポレオ
ンの辞書を奪え」に関しては各々1箇所だけ見るべきところがあっ
て…「ヘミングウェイ」はマリアが丘の上から要塞に銃を向けてい
るところを見張りに見咎められて窮地に陥り、そこへ馬に乗ったル
パンが救出に来る件り、「ナポレオン」はレースの主催者達が乗っ
た車が前後に分断されてしまって、その後部座席がゴールしてしま
うシーン。この二つは画面がしっかりしてますね。

くま
馬のシーンは確かにイイですね。雰囲気的に安藤真裕か、もしくは
西澤晋かなぁ、と思います。「ナポレオン」ゴールシーンは亀垣一
かも。いずれも確証無しですが。
初期の頃で作画的に頑張ってるかな、と思ったのは「燃えよ斬鉄剣
」です。五右ェ門の殺陣が珍しくしっかり描かれている作品であり
、特に冒頭のアクションシーンはなかなかの見応えです。

池本
あの冒頭のアクションはキレがあっていいですね。
くま
幻斎のおっさんとルパンが対決するくだりも、短いながらテンポが
良く、非常に丁寧な作画が見られます。作画監督の高谷浩利、中沢
一登の力量が伺える作品です。肝心の作品自体は、ただ間延びして
るだけの微妙な出来だと思いますが…。あと、高谷浩利作画は「ハ
リマオ」でも見ることが出来ます。こちらも作品の評判自体は悪い
ですが、作画はとても丁寧です。

池本
「斬鉄剣」「ハリマオ」における須藤昌朋総作画監督の画風は、こ
れまでのテレスペ作品の中では唯一評価してもいいかも知れないで
すね。旧ルをベースに現代的解釈を加えたラインは全く問題が無い
わけじゃないけど、割に手堅く纏まってて。

くま
須藤総作監のデザインは、肩が若干現代チックですね。胴と足のバ
ランスも然りで。
劇場版「くたノス」は、長編ルパンのなかではもっとも『手間』の
かかってる作品ではないでしょうか。実際、テレコム主体の作画の
クオリティは相当高く、劇場作品に恥じないものには仕上がってま
す。しかし、残念なことにシナリオが今いちで…。また、監督が実
写の人なのも関係しているのか、今いち画面がしっくり来ません。
アニメとしてあまり面白くないと言うか…。なんか勿体ないイメー
ジが残ります。全編通して丁寧な動きであり、特に後半のビル崩壊
の辺りは、見せ方によってはもっと燃える展開に出来たのではない
でしょうか。

”ハリマオの財宝を追え”イラスト
by くま
”ハリマオの財宝を追え”イラスト by くま
池本
画面自体は割に手堅いですよね。ただまぁ突出した面白さが無い。
それは今まで何度か口にしてきてる事ですが『作家不在』な部分が
原因でしょうね。中心となるべき強烈な作家が「くたノス」には見
当たらない。実写監督起用も例によって弊害でしかなくて、伊藤俊
也はシナリオチェックをしただけで、一切の変更を許さず、後は何
もしないで去ったらしいですからね。伊藤俊也総監督の次に白土武
監督の名がありますが、白土色も「くたノス」には見受けられませ
んし、実質上の中心は演出の富沢信雄だったんだろうと思うんです
が…やはり『手堅いけど作家性は稀薄』なタイプなんで。

くま
同じく劇場版の「DEAD OR ALIVE」は、冒頭のカーアクションが
素晴らしい出来だと思います。背景動画を使いまくった回り込みと
か、抜群の画面がいくつかあります。

池本
あの冒頭のカーアクションだけは唯一よく出来てますね。あの作品
の中であそこだけ突出してる。別の作品が混入してるんじゃないか
ってくらいに。

くま
中盤、ルパンのアジトが襲われる件りもそれなりにイイかも。後半
のバトルシーンの作画が何かヘタれてたのは惜しいですね。

池本
何にしろ総作監の江口摩吏介がどうにもならんですね。モンキー・
パンチ監督って人選も暴挙で。例によって実質上の監督はアニメー
ション監督としてクレジットされてる矢野博之なんでしょうけど。
これまた作家不在の典型。とにかく原作者を担ぎ出して碌な事は無
いですね。アニメに関しては異業種監督ってのはまず成功しない。
ましてや、当時既にモンキー先生の作家としてのパワーはとっくに
衰えてますし。

くま
まあ、そうですね。結局作品全体を見て何をしたいのか今いち分か
らないし、監督と作画陣がガッチリ噛み合わないとどうにも纏まり
の無いものになってしまいますね。かと言って、実力のある杉井ギ
サブローのようなアニメーションディレクターを起用しても「トワ
イライト☆ジェミニの秘密」みたいなものになっちゃうし。どうす
ればいいんでしょう(笑)

池本
『今現在ギュンギュンに現役の』『有能な』スタッフを起用する事
ですね。それだけの事です。かつては天才だったけど今はもう耄碌
しちゃってる人とか、一山いくらの無能な連中とかを起用してる限
りは優れた作品が作られるはずは無いですね。

くま
テレスペに戻って「ワルサーP38」はデザインも一新され、かなり
ダークなイメージが画面に出ています。ルパンでは珍しく(笑)演
出が冴えており、水島精二氏の画面作りはなかなか好みでした。作
画もグロスっぽいメンバーで、当時流行ってたっぽい作画が印象的
です。極端なアオリとか、畳み掛ける展開とかは「エヴァ」以降の
アニメに見受けられますが、この作品にもそれが当てはまるみたい
です。作中の見所としては、色んな爆発が見られる(笑)事や、後
半のアクションシーン。あと、個人的には回想でルパンがベンツに
乗りながらワルサーを撃つカットが特に好きです。
作品全体の完成度としても、テレスペにしてはバランスが取れてる
と思いますよ。

池本
「ワルサーP38」も僕は買わないです。現代風なアプローチそれ自
体は面白いけど、結局は緩さが仇になって評価出来ないですね。
唯一拾うとこがあるのは…何だったかの施設に潜入したエレンが窮
地に陥って、そこへルパンが救出に来る件り。何だか「ヘミングウ
ェイ」といい、『ヒロインを救出するルパン』のシーンばっかしで
すけど(笑)
回想シーンは特殊な色彩設計とかが、ちょっと面白いですね。もう
ひとつ上手く行ってないように僕は思いますけど(苦)

くま
「1$マネーウォーズ」はデフォルメチックなデザインが余り好か
れていないみたいですけど、田中良作画のOPはなかなかの完成度で
す。何度もコマ送りで見た記憶があります。その記憶だけで作品の
内容は今いち覚えていないですが。

池本
あのシーンはシャカリキに動いててエネルギッシュなのは認めるけ
ど…やっぱり緩いですよ。拙い部分を勢いやハッタリで誤魔化して
るパターン。80年代作画の悪しき亡霊を見るようです。ああいった
タイプは今も連綿と続いていて、かなり評価もされがちなんだけど
僕は認めたくないですね。

くま
緩い…ですな。確かに。緩いと言うかスカスカな感じがしてどうも
物足りない。いや、OPは好きなんですよ。何だ、池本さん結構見て
るじゃないですか(笑)

池本
見るもんは全て見てますよ。その上で駄目なもんは駄目と言ってる
だけで。ま、スタッフ編成とかスチールとかを見れば本編見なくた
って、ほぼ確実に見当はつくんですけど。期待してた物を実際に見
てみたら肩透かしを喰らった、なんてのはあるにしても、「これは
駄目だろう」と踏んだ作品が「蓋を開けてみたら出来が良かった」
となった事なんてのは一度も無いですね。だからもうルパン新作に
目を通すのは単に『駄作である事の確認』に過ぎないわけで。

くま
「アルカトラズコネクション 」は原作を改悪したシナリオで、今
いち面白味に欠けるし、全体に作画が今いち、撮影的にもビミョー
な作品です。見所はOPの今石洋之作画『だけ』です!
今石洋之は大胆な構図に基づいて、誇張じみた絵で画面を作るアニ
メーター(…何か分かりにくいですが)です。他の「ルパン」で今
石作画が見られるのは前述の「ワルサーP38」(後半の格闘シーン
)と「炎の記憶」(ジェットコースターのシーン)「お宝返却大作
戦!!」(後半3カットのみ)ですが、いずれも芸風的に分かりや
すいので、注目しやすいアニメーターです。

”アルカトラズコネクション”イラスト
by くま
”アルカトラズコネクション”イラスト by くま
池本
今石洋之も僕は買ってないです。やっぱどうしても緩い。その緩さ
を、奇抜なスタイルやハイスピードで誤魔化してるだけのようにし
か見えなくて。

くま
ほんとテレスペって語ること少ないですね(ーー;
個々の作品が薄っぺらいのが問題かも。

池本
僕は平成に入ってからの「ルパン」は全て蛇足だと思ってます。
テレスペも劇場版も漫画も一切合切。

くま
ん?漫画まだ連載してるんですね。何故あれが続いているのか、意
味が分からない…って言っちゃうと怒られますかね。
もうかれこれ15年もテレスペをやってたら、いい加減、問題点が
どこにあるかぐらいスタッフ側も分かるだろうに…。
私の個人的な願望としては、オムニバス形式でやって欲しいです。
単純に90分で一つの作品をやろうとするとダレるし…90分あれば
4作品は出来るでしょうから、各々の作品を別の監督が担当し、色
んな形の「ルパン」を描くということも出来るし…。メインキャラ
で次元しか出てこないような話も作れるし。キャラデザインも全く
異なるものにしても良いはずです。「ルパン」は作家性を前面に出
すことが出来る数少ないアニメ作品だから、もっとそこに着目して
もバチは当たらないと思います。

池本
スタッフと客とが寄ってたかって死に体にしてしまった「ルパン」
を再生する方法は、いくらでもあるんだけど実行されないでしょう
ね。このままどんどん失速していって滅んじゃった方が、いっそ寝
覚めがいいだろうと僕は思います。

くま
私としちゃ、無いなら無いで寂しいわけで。何かしらあるに越した
事は無いですが、つまんないものは見たくない。そこに尽きます。
というわけで、ルパン作品を作画というアプローチから色々と喋っ
てきましたが、一通りの作品に触れることは出来ましたね。駄文長
文ご容赦。一体何人の方が読んで下さるか分かりませんが(笑)
おつきあい頂きありがとうございました。池本さんもまた機会が有
れば、作画トークを宜しくお願いします。

池本
今回は大雑把に全体的な事を把握するために、かなり駆け足で見て
きたので、またいずれ各々を細かく突っ込んで語り合いたいもんで
すね。しかしまぁホント、読んでる人なんて片手で足りるくらいだ
ろうからアレだけど(笑)

5件のコメントがあります

  • TAKE より: 2012年06月17日 9:31 PM

    パート2にも、死のアルバトロスとさらば愛しきルパン以外に見る耐える作品があることが分かって、
    大変参考になりました。

    是非、最終回と言わず、続けてください!

    • UK より: 2015年12月25日 11:07 PM

      その2話しか知らなかったって……ただのニワカじゃん!(笑)

  • 匿名 より: 2015年10月13日 10:23 PM

    何様のつもりで評価してるんですか?

  • YK より: 2015年12月07日 9:02 PM

    機会があれば、『峰不二子という女』、『次元大介の墓標』、『ルパン三世 Part Ⅳ』でもやって頂きたいですね。
    お二方がどの様な感想を持っているのか気になります。

  • 銭形の女房 より: 2015年12月26日 3:41 PM

    にわかもなにも 誰だってきっかけや入門や始まりはあるから。そうやって他人をこき下ろすの みっともないよ。スマートな知性とユーモアのわかるルパンファンらしくないよ。(笑)(大人の余裕)

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