第2回『旧ルパン』

作画を二人で語ろう(仮)
第2回『旧ルパン』

くま
旧ルパンでの作画だと、動きもいいですが池本さんが言った『一枚
絵』としても魅力的だと思いますね。まあ、各エピソード毎にデザ
インが若干違ったりしているのはご愛嬌です。さっきジャケットの
色について触れましたが、旧ルって青ジャケットに合わせてかどう
か分かりませんが、画面が青っぽいですよね。意外と青空がよく出
てくるし。作品(の雰囲気)の色をよく表してるな~と思います。
1話は初めて見たときは結構衝撃的でした。なんで今まで見てなか
ったんだろうって。いちいちルパン達がかっこいい。Bパートが特
にタイミングやらが秀逸な気がするのですがコンテがいいんですか
ね。この回のコンテは吉川惣司氏ですね。確か青木悠三氏が関わっ
てるんでしたっけ。

池本
1話はもう問答無用にカッコイイ。くまさんが言うように1話は一
枚絵として秀逸な上で絶妙のタイミングが肝ですよね。畳み掛ける
ようなカットの構成が実に映画的で。

くま
映画的ですねぇ。かっこよくみせるという拘りみたいなものがどん
どんやってくる。5話はゴエの殺陣やら畳返しやら見所満載でした
。この件りの、何やらクニャクニャっとした動きがいいなあ。極め
つけは高速道路のシーンですね。今でこそ、アニメで凝られたカッ
トはよく見られますが、当時こういう映像を作ってる人がおったと
いうのは恐ろしい。ここも青木さんですね。この回は旧ルで一番コ
マ送りをやってるので思い入れが強いんですよ。自分でこの回のコ
ンテを描いてみたりもしました。挫折しましたが(笑)

池本
5話はホント1話と並ぶ問答無用の傑作回ですね。冒頭の五ヱ門修
行シーンとかも壮絶に気持ち良くて。河内日出夫は凄い。Aプロは
ホントどうかしてる集団ですよ。

くま
河内さんは冒頭を担当していたんですね。アレを見ただけでストー
リーにぐっと引き込まれてしまいました。

池本
五ヱ門絡みのエピソードと言えば「狼は狼を呼ぶ」での示刀流総帥
とルパンの対決シーンなんかもいいですよ。上から落ちてきた分銅
を総帥が斬るときの動きの飛躍が面白いです。

くま
あの中割りの無い動きですね、無茶でしょあれは(笑)一応真剣な
場面なのに雰囲気がコミカルです。
15話は単純明快な話でもともと好きだったのですが、この回銭さん
が妙に動いてるんですよね(笑)1コマ作画で走ってたりしていた
ように記憶してます。やっぱ話が銭形VSルパンの様相が強いから自
ずと力が入るんでしょうね。

池本
あれは1コマのフルアニメじゃあないと思いますよ。2コマ位じゃ
ないですかね。だから結局は誇張とか切り取り方の問題で。宮崎駿
ってのはエネルギッシュな動きに関して天才的ですよね。旧ル後半
のコミカルな演技で挙げるなら「エメラルドの秘密」のダンスシー
ンとか「罠にかかったルパン」のアドバルーンでの逃避行の件りと
かが気持ちいいですよね。「宝石横取り作戦」の空中戦なんかも宮
崎駿節爆発で必見です。画面構成がとにかく上手い。「どっちが勝
つか三代目!」なんかも倉庫に本物の銭形が登場してからのドタバ
タや、フランスフェア会場での大騒ぎなんかが実に楽しい演技の連
続ですよね。最終話「黄金の大勝負!」がその集大成で。

”ファーストシリーズ”イラスト
by 池本 剛
”ファーストシリーズ”イラスト by 池本 剛
くま
宮崎駿の真骨頂はドタバタやね。アニメとして楽しい映像に仕上が
ってる感があります。

池本
前半中盤の取りこぼしを拾えば…「脱獄のチャンスは一度」クライ
マックスの銭形とルパンの対峙シーン。会話の内容と画面の切り返
しの相乗効果で緊張感が無闇に高まるんですよ。特に、目の弩アッ
プが効いてて。後は「タイムマシンに気をつけろ!」冒頭の魔毛狂
介登場の件り。ルパンが車を停めてワルサーを構えるまでの畳み込
み方が凄く気持ちいい。

くま
あの一連の動作は素晴らしいですね。誰がやったんだろ。ルパンの
アップから「誰だ、お前は」まで5カットも!一瞬なのにPANして
たりして芸が細かい。緊張感のあるシーンですね。こういうの久し
く見てません。

池本
旧ルパンは無闇に作画陣が贅沢で…作監の大塚康生を筆頭に錚々た
る面子が名を連ねているわけで、こんだけ物凄い編成てのは、はっ
きり言って異常事態(笑)中には勿論ヘボい回とかも混じってるに
せよ、凄いところは尋常でなく凄くて…それはもう兎に角どえらい
才人が寄ってたかって作ったわけだから当然の帰結なんだけど。
大雑把に言えば旧ルでの作画傑作回はAプロ作画回とAプロ・OH
プロ作画回に集中してるので、そこさえ押さえておけばオッケーと
いう言い方も出来ますが。

くま
私が初めて見た旧ルが「魔術師と呼ばれた男」だったのですが、当
時ってこんなに作画凄かったのか、と思ってしまいましたよ(笑)
原画、動画には今も活躍している方も結構いますね。

池本
旧ルの纏めとして大塚康生に言及しておくなら…大塚康生の画風っ
てのは微妙に丸い感じのフォルムが特徴で、それがつまり人間臭さ
だとか生っぽさ、湿気みたいなものを感じさせるわけで、その意味
でそれが旧ルのムードを決定づけてる大きな要因のひとつになって
るんです。
他に特筆すべき点としては、バランスを崩してるという点。左右対
象とかの均衡を崩すことが念頭にあって、これも生っぽさを生んで
いる。体温が感じられる作画ですね。

くま
柔らかみのある画風ですよね。そしてとりわけキャラの表情が豊富
な事!思いっきり笑ったり歯がぼろぼろになったり(笑)大塚康生
の描くキャラは笑い方だけでも千差万別で、そういうところに私は
魅力を感じます。この画風は、コミカルさが目立ってきた後半に特
に似合う気がします。実は私の絵は、結構この辺りを取り入れてい
るのですがあまり目に見えてこないなぁ…(苦笑)
大塚康生といえばメカの描写、と言われがちですけどね。

池本
よく言われる実証主義に関しては注釈が必要で…あくまでも雰囲気
とか気分を盛り上げるために、『らしく』描いてるという面があっ
て、それはつまりガチガチの糞リアリズムじゃあなくて、詰める部
分と飛躍・省略してる部分とが見事に融合してるってのが大塚康生
式実証主義の肝としてあるわけです。
といった辺りで新ルパンへ話を進めますが…。

公開日: 2004-05-16 00:00  投稿者:  カテゴリ: コラム

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