青木悠三第二弾です。今回は彼が関わった劇場版「ルパンVS複製人間」、「バビロンの黄金伝説」、そしてパート3を紹介していきたいと思います。
~「ルパンVS複製人間」1978年作品~
脚本:吉川惣司・大和屋竺
(絵コンテ:吉川惣司)
レイアウト:芝山 努
作画監督:椛島義夫・青木悠三
原画:友永和秀・丹内 司・葛岡 博・小泉謙三・渡辺 浩・増谷三郎・四分一節子など
青木氏が担当しているのは、序盤、ヘリがルパンたちを襲うくだり。一般市民を容赦なく巻き込んだ激しい描写が印象的です。カンの良い方なら、閃光と煙で見抜くのではないでしょうか(青木悠三をもっと知ろうその1参照)。その後ベンツに飛び乗るルパンと次元、このあたりの動きと、カットチェンジの気持ちよさは秀逸です。ベンツのラインが独特ですね。友永和秀氏担当の下水道での五右ェ門のシーンを抜けると、再び青木作画となります。不二子の運転する赤いクーパーに飛び乗り、敵の銃撃から逃れるカット。短い尺ではありますが、一コマを使った切れのいいシーンです。その直後の、不二子を車から降ろすシーンは、青木氏らしい、パタパタした作画になっています。こういうカットに氏の作画の魅力を感じます。
続いて銭さんの乗るパトカーとのカーチェイス。めまぐるしく変わる風景。バックにかかるテーマ曲がシーンを盛り上げています。そしてついにあのありえない大きさのトラックが出現します。(予断ですが、最近のルパンにはこういう「ぶっとんだ」描写や展開が少ない気がします。)タイヤとガードレールにはさまれるカットで、トラックの前輪が画面手前に来るという描写に、センスを感じます。ギアを落とすことでスピードが落ちるというカットをボンネット側から描くという度胸もすごいと思います。この一連のカーチェイス、動きも良いですが、何よりクーパーに乗った3人の表情がとても細かい!!コマ送りで是非ご覧ください。遊び心もたっぷりの青木作画は見ていて楽しいです。
カーチェイス後、クーパーが爆発するカットも、煙の処理の仕方に特徴出ています。セスナから逃げる三人の逃げ方にもそれぞれの特徴が出ていて楽しいカットになっています。
まとまった形ではここまでですが、他にも青木作画のカットが幾つかあるかもしれません。ご存知の方は是非ご一報ください。
~「バビロンの黄金伝説」1985年作品~
監督:吉田しげつぐ・鈴木清順
脚本:大和屋竺・浦沢義雄
絵コンテ:吉田しげつぐ・小華和ためお・甲賀 電(尾鷲英俊)
作画監督:
青木悠三(序盤と後半?主にメインキャラの修正?)
尾鷲英俊(一部アクションシーンと後半?)
柳野龍男(中盤?サブキャラの修正?)
原画:窪岡俊之・高坂希太郎・長岡康史・丹内 司・飯田つとむ・菖蒲隆彦・瀬尾康博など
バビロンにおける青木作画は冒頭のルパンと銭さんのバイクアクションでしょう。作画というのはまず脚本・演出ありきだと思いますが、ここはサービスと割り切りましょう。背景動画うごきまくり、バイク回り込みまくり、80年代だな~と感じさせる作画です。その意味ではあまり青木作画っぽくない気もしますが。
後半の青木作画は、黄金のバベルの塔が出現するくだり。動きも素晴らしいですが、エフェクトにとても気合が入っています。
バビロンにおいては、青木作画を判別するのが難しいです。全体的な作品の特徴として、巧い原画スタッフとそんなに巧くない原画スタッフの実力差が露骨に表れており、さっきまでヘタレていた作画が、急に完成度の高い作画のカットになるといった場面も見受けられます。「五右ェ門が列車を切り離した後のくだり」や、「砂漠で銭形とザクスカヤの戦車に追われるルパンのジープのくだり」が代表的です。また、ルパンや不二子の修正は主に青木氏が手がけているものと思われ、彼らの表情の描写がとても細かいのも特徴です。あと、キャラクターの一つ一つのポーズやしぐさにも注目してみてください。
娯楽映画に徹した「バビロンの黄金伝説」。作画面においての青木悠三の功績は計り知れません。
~パート3~
念のため青木参加回はすべて列挙&説明を入れますが、作画監督及び原画をやっている回でないと青木テイストは見受けられないと思います。例によって隠れ青木は()で表示しました。
尾鷲英俊
柳野龍男
柳野龍男
青木悠三
青木悠三
特徴
・作画監督連名の場合は、AパートBパートに分かれていることが多い。
・新ルパン等に比べると、青木作画のテンションはそれほど高くない。というか少ない。
・ご存知のとおり、キャラデザは回を追うごとに変貌する。作画監督によってさらに変化がある。
・#27の絵コンテ、ケン・タロウは青木悠三…かも知れない。
解説(というほどではありませんが)
・「金塊はルパンを呼ぶ」は当時放送日をルパン三世パート3にあやかって3月3日にする、というイベント(?)により、制作期間が一ヶ月も縮まったため、クオリティに若干難があります(イベント自体に文句は無いが、そのせいで作品の質が低下するのは本末転倒である)。
この作品の作画において、青木っぽさはあまり感じることができません。むしろ作画監督のベテランアニメーター荒木伸吾の色のほうが強いと思われます。
・「こんにちは地獄の天使」も青木作画を見ることはできません。コンテ自体もそれほど変化は無いように感じます。
・「ショータイムは死の香り」はパート3の中でも秀作の部類に入ると思います。Bパートが素敵です。ただし、青木氏は作画には関与していないのではなかろうか。作画の特徴はむしろOHプロとして分類すべきでしょう。
・「ニューヨークの幽霊」はBパートを主に作監をやっています。後半、五右ェ門の脱出シーンがコンテといい作画といい、センスの良さを感じます。
・「暗号名はアラスカの星」は作画もやってます。Aパート、不二子がKGBの連中に襲われるくだりです。
・「カクテルの名は復讐」は脚本が優れた作品。青木氏は主にAパートで、動き自体は少ないですが、雰囲気が良く出ていると思います。
逆にBパートがヘタれる…。
・「ターゲットは白銀の果てに」はBパートの一部。ですが作画自体にあまり魅力はありません。後半の作品はバビロンの制作とも被っているので、クオリティが低下しているのが非常に残念です。
・「俺を愛したレティシア」Bパートで原画をやっています。ですが、ストーリーがいまいちなので作品自体あまり省みられることはありません。
・「ハディスの涙」は後半の作品にしてはシブいです。奥脇氏コンテ・演出と、中村勝行氏の脚本の功績が大きいと思います。作画はAパートがそこそこ出来がよく、Bパートで青木氏の特徴が伺えます。
・「原潜イワノフの抹殺指令」ではBパートの後半を青木氏は担当しています。が、ストーリーも並かそれ以下なのでやはり注目されることは少ないです。作画自体も特に見るところは無いかと思います。
通りがかりに失礼します。
パート3ファンの朱乃弥矢と申します。
貴重なコラム、参考にさせていただきました。
青木さんはもっと前面に出てお仕事してほしいです。