この旧ルパンは全23話ですが、そのうちの多くがストーリーや演出に恵まれ、さらに作画においても完成度の高いシリーズです。作画監督の大塚康生氏を筆頭に、有能な原画スタッフの力が発揮された旧ルパン。今回は全23話のうち、特に見所のある作品をピックアップして紹介したいと思います。全6話。
高畑勲
高畑勲
高畑勲
特徴ッ
・大隅演出の回はキャラが微妙に違う顔。
・後半はキャラ(特にルパン)の歯が出っ歯になったりボロボロになったりする。
・メカ関係の作画が丁寧っ。
・キャラのしぐさがとても丁寧っ。
・青木雄三が参加している回がある。
・大隅演出では1コマ作画が多用されている。アップが多い。
・レイアウトが総じて秀逸。
解説ッ
記念すべき第1話「ルパンは燃えているか・・・?!」は、作画的にもストーリィ的にもだれる所がほとんどありません。大隅正秋氏の演出の特徴として、短いカットに1コマ作画を使うというものがありますが、この話では、その演出がいかに効果的かを私たちに伝えてくれます。そして作画的にはとりわけF1でのカーアクションが秀逸な作品です。その影の立役者は当時なんと19歳だった青木雄三(青木悠三)氏の力量が大きいと思われます。彼の旧ルパンにおける特徴として、細かく描き込まれたメカ、広角レンズを意識したかのような画面構成が挙げられます。話は変わりますが、この回のルパンの顔は若干面長ですね。大隅ルパンと呼ばれるエピソードでは、その都度ルパンたちの顔が変わっているようにも見えます。実際この次の回の「魔術師と呼ばれた男」のルパンの顔はけっこう別物です。
第5話「十三代五エ門登場」は五エ門初登場の回です。冒頭から五エ門の殺陣が際立っています。ここは河内日出夫さんでしょうか。近藤善文さんは畳返しのシーン?あと、高速道路のシーンは青木悠三氏だそうです。このあたりの構図は神懸り的なものがあるのでぜひご覧になってください。
第9話「殺し屋はブルースを歌う」は全体的に(というか旧ルパン全体的に)かなり動いているのですが、特に目を引くのはAパート終わりごろのベンツで追うルパンです。ものすごいカメラアングルなのでご確認ください。ここも青木悠三氏でしょうか?
第11話「7番目の橋が落ちるとき」は、やはりクライマックスのルパンの追撃シーンでしょう。ルパンの走りや、銭形の手錠の掛け方なども丁寧です。ワルサーの発砲シーンはいうまでもありません。冒頭の橋の爆破のくだりも何気によくできていると思います。また、この回では作画作業への負担を軽くするためか、カメラのPANがとても多いように感じます。具体的には、ルパンが船に乗っているときや、装甲車が狭い路地を通過するときのカメラワークです。このあたりでも、初期の大隅作品との演出の違いが少しわかりますね。単に制作の状況が厳しかっただけかもしれませんが、その状況下で、うまく見せようとする工夫が伺えます。
第15話「ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう」はこのあたりになるとかなりコミカルタッチになっているのですが、この回は特にそれが際立っています。そして、作画のレベルもとても高いです。旧ルパンではそうじて「走る」というアクションがとても丁寧に描かれていますが、この回も例外ではありません。銭形警部がへんてこな走り方をするときはたいてい見事な1コマ作画です。そしてわすれちゃいけないのがラストのベンツが走り去るカット!!この動きは難しいだろうな。
第23話「黄金の大勝負!!」は何といっても前半のカーチェイス!ミニクーパーの動きが素晴らしすぎます。ここは青木氏?当時からこんな動きをやる人がいたのかと思うとほんとに嬉しく思います。
第5話「十三代五エ門登場」の畳返しのシーンは、小林治さんですよ。オープニングのサーチライトを受けて走るルパンや、一話の冒頭からレーシングカーのスタートのあたりまでと、不二子をくすぐるシーンも小林治さんです。(亜細亜堂出身のアニメーターより)