作画を二人で語ろう(仮)
第7回『PARTIII その2』

くま
詰めるという意味では総作監制は有効でしょうね。特にPARTIIIはグ
ロス(作画などを他の制作会社に任せること)が多いので。候補を
挙げるなら神村幸子でしょう。あーーそう言えば神村回自体もグロ
ス扱いなのかな?
神村作画で触れておかねばならんのが「黄金のリンゴには毒がある
」Aパートや「裏切りの荒野を走れ」といったところですね。

池本
「黄金のリンゴ」Aパートは佳作ですね。特に出だしの部分。客船
の全景や鮫の中のルパンとか秀逸ですね。線も美しいし。ただまぁ
非神村のBパートで台無しになるのと、手堅くはあるけど傑作では
ないよなぁ、とか。この辺のニュアンスは「秘宝は陰謀の匂い」な
んかも同じですけど。せめて全編を神村幸子がやってれば新ル初期
の友永回のような評価も可能だったのかもしれませんが。
つーわけで「裏切りの荒野を走れ」。これはもう神村幸子爆発で。
他の神村回の場合は、いいとこはいいんだけど緩いとこは緩くて…
って、それはまぁ神村幸子担当部分が多いか少ないかが問題になっ
てるわけですが(笑)そこ行くと「裏切りの荒野」は全編ほぼ隙が
無い。その上で大川俊道の脚本も秀逸で。だからこの回はもう問答
無用に面白い。
結局僕は青木悠三の持ち味を上手く再現出来たのは神村幸子だけだ
ろうと思うんです。尾鷲英俊なんかもいい仕事したりしてますけど
尾鷲作画って青木悠三とまたちょっと違うでしょ。その他の柳野龍
男とか松原京子とか井上昭子とかはもう論外だし。だから神村幸子
が途中で抜けてしまったのはPARTIIIというシリーズにとって物凄い
損失だったなぁとつくづく思います。
そして青木作監回からは「暗号名はアラスカの星」と「カクテルの
名は復讐」の2本ですね。どちらもAパートだけですけど。柳野龍
男担当のBパートで一挙にヘロヘロになるのが痛恨ですが。「ニュ
ーヨークの幽霊」なんかでもBパートはグーなのにAパートの柳野
龍男が雑で…。何で青木と柳野で折半した回が多いんだろう。

くま
「ニューヨークの幽霊」Bパートは水が噴き出して脱出する件りは
テンポいいなあ。恐らく当初は柳野作画監督回だったのが間に合わ
ず、青木悠三、または尾鷲英俊が入るという形だったのでしょう。
でなければ「カクテル」みたいに青木悠三が初めからAパートのみ
入るなんて考えにくいので。
「カクテル」は平野靖士脚本が優れているので、青木コンテ・作監
ならかなりの秀作になっていたでしょうね。憶測の域を出ないのが
残念。

池本
PARTIIIの脚本家としては大川俊道と平野靖士を特筆しとくべきでし
ょうね。…ってこの対談は画面についての対談なんでこれ以上深く
は突っ込みませんけど(笑)
ただまぁとにかく「アラスカ」と「カクテル」のAパートは素晴ら
しいです。PARTIIIの作画の頂点はここにあります。青木ルパンの完
成形と言ってもいいんじゃないかなぁ。
その他の取りこぼした回について、いくつか言及するなら…まずは
荒木伸吾作画回。「金塊はルパンを呼ぶ」と「死神ガーブと呼ばれ
た男」の2本。荒木伸吾の美麗な作画は見るべきところも多いです
けど、どうもまだシリーズ序盤だった事もあってか緩い部分が目に
つきますね。シリーズに残っててくれればきっと凄みを増していっ
たでしょうから、それを思うと残念です。

”PARTIIIシリーズ”イラスト
by 池本 剛
”PARTIIIシリーズ”イラスト by 池本 剛
くま
荒木回は慣れていない感があります。ただ「死神ガーブ」は脚本は
金子裕、コンテ・演出が吉田しげつぐという布陣で全体的にも良か
ったし、後半は特に気合い入ってますから見所はありますね。

池本
「ガーブ」は吉田しげつぐの演出が手堅いのもあって全体の雰囲気
は渋くていいんだけど、細かく吟味すると線がこなれてない部分が
あったりして物凄く勿体ないんですよ。面白いんですけどね。
他には…「ショータイムは死の香り」や「ライバルに黄金を」など
も佳作ではあります。詰めが甘いのが難点ですが。「ショータイム
」Aパートは柳野龍男にしては健闘してるなぁって感じ。「一枚の
お宝で大混戦」なんかも雑で仕方がないんだけどエネルギッシュで
はあって柳野回の中では良作の部類でしょう。
後は「原潜イワノフの抹殺指令」。少々雑な部分が目立つのがあれ
ですが、PARTIII終盤のコメディ路線作画も『やる人がやればいける
』ことを証明してますね。描き流してるような部分を念入りにやれ
ば「イワノフ」はグッと良くなるだろうと思います。

くま
「イワノフ」は巧い方が揃っているのに勿体ないですね。

池本
「イワノフ」に限らず終盤の青木作画回や尾鷲作画回は佳作レベル
ではあるんですよね。仮に…巧い原画マンがもっと脇を固めてスケ
ジュールにも余裕があれば、傑作・快作になってたかもしれず…。
「バビロン」公開が85年の7月で、最終話の放映は…諸々の事情で
ズレ込んでるけど計算してみると多分これ「バビロン」と最終話辺
りはほぼ同時進行ですよね。
コメディ路線のルパン像を構築し損ねたのは残念です。とは言いな
がらコメディタッチな画風はシリアスな脚本とは相容れませんから
、たとえコメディ路線の画風が定着してたとしても、その辺の乖離
が原因で失速はしてしまってたんでしょうが。
…ところで。前から抱えてる疑問があってですね。「ダイヤに炎は
似合わない」のBパートはちょこちょこ「上手いなぁ」って箇所が
混じってるんだけど、これ一体誰が担当したんだか判らないんです
よ。作監の柳野龍男は明らかに違うから外すとして…原画担当の名
前見ても知らない名前ばっかりで、この中の一体誰なんだか皆目見
当がつかないんだよね。くまさん何か思い当たる名前ある??

くま
「ダイヤに炎は~」のBパートって下手すりゃ柳野龍男の修正すら
入ってませんよ!?ちょっと目にとまる箇所といえばBパートの頭
ぐらいでしょうか。

池本
いや…Bパート全体にちょこちょこと『いい画』が混じってるんで
すよ。一体誰が描いたんだろうなぁ。

くま
確かに、崩れまくってる中に画がいいのがある…。全然気にならな
かったです。ちなみにこの回は原画の中で際だった人はいません。
演出の曽我部孝あたりが描いたのかなぁ。

池本
あ!!…あり得る!!「ダイヤに」と「カクテル」以外で曽我部孝
がコンテなり作監なり原画なりをやってる回を挙げると…「結婚す
るって本当ですか」「1000万ドルの鍵」「天才少年の危険な遊び」
「ターゲットは白銀の果てに」「父っつあん大いに怒る」「一枚の
お宝で大混戦」の6本。特に「天才少年」や「ターゲット」とかは
ちょこちょこ『ちょっといい画』が混じってるから…曽我部孝がそ
の辺の原画も担当したんだ、という可能性は強い気がするね。
コンテ担当だから無意識に外してたけど、コンテ担当が原画もやる
例は無くは無いもんね。迂闊。んーー…曽我部孝か。小さな発見か
も。

くま
結局のところPARTIII全体的に作画、演出が力不足かと。作画におい
てずば抜けてるのは青木、神村など極々一部。演出に関しても抜き
ん出ている人はいないし…。作画監督が二人というのも、画面が不
安定になる要因ですね。そして劇場作品をやるはずだった押井守と
その一派が降ろされてしまったために、PARTIIIスタッフが「バビロ
ン」を同時に作業するという自殺行為な制作事情が重なって、後半
は大人しくなってしまいましたね。

池本
PARTIIIは本当に様々な要因に翻弄され続けた不運のシリーズですね
。でも見るべき箇所は沢山あって…やはりまぁ全体的な完成度はや
や落ちるけど、とにかく意欲はあって、アップアップの切り返しや
バストショットの羅列に終始するお手軽アニメに逃げ込まないで、
フルショットにフルショットに持って行ってたりだとか、とにかく
動かそうと努力してて。だからまぁ各シリーズの傑作回を較べると
これはもう各話論に落とし込むしかないんだけど、シリーズの平均
的なレベルで話をするなら…PARTIIIは旧ルよりは落ちるけど新ルよ
りは評価すべきだろうと思いますね。
後は…これまで触れてきませんでしたけど、石垣努の美術もPARTIII
の洒落た空気を決定づける上で大きな役割を果たしてる点を忘れて
はなんないと思います。

1件のコメントがあります

  • 与太娘 より: 2013年10月21日 11:23 PM

    ここにもわけわかんないコメントが????

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