作画を二人で語ろう(仮)
第6回『PARTIII その1』

くま
では、PARTIIIに行きましょうか。旧、新は何だかんだ言ってみんな
好きなんでしょうが、PARTIIIはファンの中でも賛否が分かれますね
。その焦点はしばしば青木悠三のキャラデザインに行くわけですが
。ただ、良作の割合だけを見ると新ルよりも高いんですよね。もち
ろん作画の観点からも見所はあります。PARTIIIを見続けるにはまず
、めまぐるしく変わるキャラデザインに慣れる必要がありますね。

池本
良作の割合は旧が1/2、新が1/5、PARTIIIが1/3ってとこだろうと
思います。PARTIIIの画風の変化って散々言われますけど、旧だって
新だって変化してるし、各回のバラつきにしたってPARTIIIだけの問
題じゃないんだけどね。何でPARTIIIだけが取り沙汰されるのか僕に
は意味が判らない。
それはそれとして。PARTIIIのキャラデザインの変遷は、シリーズを
転がすにあたっての青木悠三自身の変化が本線としてありつつ、そ
の都度それを各スタッフが再現出来てる出来てない等々によって揺
れてるんですね。後半は青木の流麗で洒脱な線に追いつけないスタ
ッフへの配慮からか、ファンのブーイングを受けて新ル寄りに軌道
修正したのか、「バビロン」でスタッフが手薄になった事への配慮
からか…とにかくはある種の撤退をしてますけど、今になって「初
期の原作テイストの作風が良い」なんて声が高かったりして、実に
皮肉ですね。

くま
キャラデザイン自体が変わるから、同じ作監の回でもデザインが変
わってしまうというのが見受けられますね。結局新ルとも異なるも
のが出来上がりましたけど。見る方はむしろ、変化を楽しむ余裕が
あればもっと楽しい…と思います。

池本
常々思うんだけど…自分が慣れ親しんでいる物と『違う』の一点だ
けで否定する連中は死んでほしいんだよね。この場合、新ルと『違
うから』PARTIIIは駄目だと言う連中ね。いや別に趣味嗜好は誰にも
あるから「合わない」とか「好きでない」なんてのは当然あるにせ
よ「評価しない」のは、それは別問題だろうと。僕も新ルパンなん
かはシリーズ全体で評価するなら辛い評価にするしか無いけども、
最終的には各話論に持ってくしか無いんであって。旧も新もPARTIII
も全て。

くま
絵柄が世間一般に知られる新ルとは異なるからという理由でPARTIII
自体が評価されないのは勿体無いな。ちゃんと評価するためには、
今まで新ルやテレスペなどを見てきて養ってしまった『フィルター
』(先入観的な意味で使ってます)を取っ払うことが出来るかどう
かなんですよ。PARTIIIの場合、なまじそれまで他の『一般的な』多
くの「ルパン」を見てきた人が多いから、そのフィルターを取るの
が困難なんです。そういう人がこのPARTIIIの絵柄を見ると拒絶して
しまう。

池本
特にPARTIII後半のコメディタッチと言うかディフォルメの度合いが
高い画風に対するアレルギーが強いようだけど、そんなもん「お前
の民度が低いんだ」としか思えないしね。線が少なかったり頭身が
低いとイコール「絵が駄目!」となる馬鹿には、いい加減うんざり
です。素人の客は黙ってろと思うんだよね。作家に一流から三流が
あるように、客にだって一流から三流まであるんだから。

くま
視聴者にもハイレベルを求める池本さん、流石厳しいですね。
最近の絵の流行りというのも関係してるでしょうが、絵を見ただけ
で作品をも評価してしまったかのような錯覚には陥って欲しくない
です。いろんな点でPARTIIIは不憫なのですが(笑)
そろそろ作品の方に入っていきましょうか。
まず私が挙げている「ルパンが戦車でやってきた」です。「ルパン
」における神村幸子初作画監督回ということで挙げました。ギャラ
ンコと次元の対決シーンのタイミングや、マグナムを拾う次元やら
が好きでして。80年代作画ってこういうのを言うのでしょうか?一
枚絵としての質を落として動作の詰めを甘くするみたいな感じ?
ところで、こだまコンテは密着マルチスライド(セルや背景をスラ
イドさせる)がよく見受けられますが、冒頭の次元が酒場に入る際
にも使われてますね。それ以外は特徴といった特徴はないかな?良
作は出来ても超傑作には至らないというところでしょうか。

池本
僕がよく口にする80年代作画って造語が意味するところはーー金
田伊功をルーツとした一連の流れを指してるんですが、始祖の金田
伊功自体はオッケーなんだけど金田伊功に影響を受けてる『それ以
降』を僕は嫌いなんです。どぎついディフォルメ、ハイテンポなリ
ズム、オーバーアクションとかが特徴的なわけだけど…あれ結局緩
いんですよ。ハッタリ自体は好きなんだけど、それはあくまでも基
本を押さえた上での飛躍だから面白いわけで、僕が『80年代作画』
と括る一連のあの辺りは緩さを隠すためのハッタリにしか見えない
んだよね。あるいはハッタリまずありきで足腰が弱い感じ。とにか
くは…派手にチャカチャカ動くからインパクトはあるのかも知らん
けど一枚絵にバラせば緩々だわ動きもハイテンションで誤魔化して
るだけで見るとこが無くて。何にしろ僕は全く評価してないんです
よ。「ルパンが戦車で」で言うと、その次元の件りや五右ェ門の殺
陣の辺りなんかがそうですね。

くま
その辺が好きなのはやはり私が作画について浅いせいでしょうか(
苦笑)当時のアニメ事情は流石に詳しくないですが、この金田作画
が徐々に派生したのがこの頃なんですね。代表的なアニメーターが
第20話「過去を消した男」と第27話「暗号名はアラスカの星」で
原画をやっている山下将仁ですね。「過去を~」Bパートではドタ
ドタしたアクションで、どちらかと言うとハッタリを前面に押し出
した感じですね、私は好きなとこですが。一方「暗号名は~」の冒
頭ではとても緊迫した雰囲気を出せてるかな。雰囲気的には押井守
監督の「ダロス」みたいな感じに。メカの影をブラックにしている
から印象に残りやすいです。

”PARTIIIシリーズ”イラスト
by 池本 剛
”PARTIIIシリーズ”イラスト by 池本 剛
池本
山下将仁を僕は買ってないんです。パッと見に派手だけど見るべき
所が無いなぁ…といった感じです。ああいった画風やタイミングっ
てのは、あの時代の気分ではあったんでしょうが客観的にはやはり
どうしたって緩いし僕は当時から嫌いでした。勿論ああいった芸風
が嵌る作品もありますけど、少なくとも「ルパン」には合わないだ
ろうと。
「アラスカ」冒頭の件りは内容がシビアだし、音楽との相乗効果も
あって割に好きです。山下将仁担当箇所では唯一好きかも。ただま
ぁ…やっぱりどうしてもチャカチャカした画風が「そぐわないなぁ
」というのがあって手放しには誉めれませんけど。ハイコントラス
トの影も、僕には安く見えてしょうがないんですよ。この辺ではい
つもくまさんと真っ二つですね。

くま
いつもね(笑)あとは好みの問題か。それとは別に『80年代作画
』をやっているのがOHプロ回です。第25話「俺たちは天使じゃな
い」第34話「マンハッタン・クライシス」第49話「とっつあんが
養子になった日」辺りで私は意識しました。いずれもストーリー的
には何てこと無い回ですが、尾鷲英俊(甲賀電)のコンテもテンポ
よく、私は拾っちゃいます。
見直してみると絵的には完成されてはいないかも。動きは良くても
ヘタってるカットはありますね。多分描いてる側が、「とりあえず
動かしてやろう」的なノリなんでしょうね。勢いだけでもあれば、
それはそれでいいのではないかと甘い評価を下します。これでも私
は厳しく見とるんですよ(笑)
OHプロ回に限らず、スタッフが若いせいか、制作スケジュールが
過密だったせいか『未完成』な感が強いです。もう少し実力ある人
材が集まれば青木悠三デザインの魅力も遺憾なく発揮されたのでは
ないかと。

池本
異論無いですね。OHプロ回は「動かそう」という意欲に漲ってて
、だから画面に活力もあるんだけど…でもやっぱりどうしても緩い
ですね。一枚絵としてもそうだし、動きにしてもそうだし。凡百の
糞作画回に較べればそりゃあOHプロ回は「動いてるなぁ」とは思
いますけど、だからオッケーとはならないわけで。動けばいいって
もんでもないだろう、とか。
ただまぁやっぱり賑やかに動いてる画面を見ると気分は高揚するわ
けで、後一歩きっちり詰めれば文句無いんだけどなぁとは思うわけ
で、その辺では勿体ないなぁと思います。

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