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Re: さて

投稿者: YMD (2007 年 07 月 30 日 05:36:14)
回答先: さて / 投稿者: master (2007 年 07 月 29 日 19:44:11)

とりあえず冒頭の掴みのシークエンス、銭形とのおっかけっこで
劣化007みたいなアクションをやるというしょーもないパターンは
いい加減にやめてほしい。
「盗む」という行為をルパンのアイデンティティとしておさえず
ないがしろにするから、そんなルパンがその後になにを巻き起こしても
まったく魅力が感じられない。
視聴者には「ルパン三世」というアニメでは、ルパン達が最後は無事で
次回作に繋げなければいけないことはバレてしまってるわけだから
状況における思考や行動、すなわちルパンの人格をどう解釈するかが
作品の根底にないと、いかにルパンがストーリーに干渉していても
本質的な意味ではルパンがその話の傍観者になってしまい
つまるところ「ルパン三世」として作る意味がないと思う。

メインストーリーも、あらゆる映画や小説で散々やりつくされて
設定の矛盾しか生まないことが明白なタイムパラドックスを
題材にしたのはいただけなかった。
そもそもあの過去の世界の状況は、わざわざ過去に戻らずとも
現代で同じ構図が構築可能なわけで、過去に行く必然性、ひいては
魔毛とタイムマシンの存在意義自体が希薄。
旧ルの魔毛の話をなかったこととして再利用するならば
別に新キャラでも良かったわけで、となると魔毛を出した意図は
旧来からのファンへの訴求、もしくは作り手自身のファン意識に
他ならない。
(全編にシリーズのオマージュシーンが散見される点から言っても
作り手の志向がそうした類であることは明らか。)
であるならば、魔毛のタイムスリップ自体がハッタリのトリックで
実はずっと現代が舞台だったというくらいの裏切りがある脚本でも
よかったんじゃなかろうか。
ルパン同様、魔毛もルパンの敵として相応しいキャラの掘り下げがなく
過去のネームバリューのみというのが、見続ける上での上での興味を
著しく低下させている。

ただ不二子を現代に残して、おふみを身代わりとして活躍させることで
年老いた増山さんの台詞を最小限に抑えた手法はうまかった。
(アニメでは、先祖や子孫は同じ役者さんが声をあてるのが常道で
事実ルパン33世もクリカンがやっていたことを考えれば
これは作り手の確信犯的行為であることは明白。)
演じたのがタレントなのはアレだが、別の人が声をあてるのを
正当化させるための方便という製作側の事情も考慮すれば止む無しか。
(他方、魔毛の中村獅堂の演技はなかなか良かった。
タレント起用はとかく批判されがちだが、それが自体ダメなのではなく
声だけの演技ができる人を選ぶことが重要なのだと再認識した。)

総体としては、ルパンファンに否定されないような要素を繋ぎ合わせて
体裁を整えているが、それが故に単独の作品としての主張が希薄で
作らされてる感を感じさせてしまう作品だった。
ま、そういう意味では、無難に続けてファンから搾取するという
制作側の要求を満たした作品ではあったとも言えるわけだけど。


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