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「生きていた魔術師(IF)」長文御免

投稿者: D,D. (2002 年 04 月 17 日 18:34:45)

 公式BBSに書き込もうかと思ったのですが、容量等の問題で、こちらにお邪魔しました。非常に長文ですが御容赦ください。私も「生きていた魔術師」ようやくレンタルで見ました。予想通りスペシャル並みの出来で、モチーフが旧作だった分ダメージが大きいですね。批評的な意見は、みなさんの言うとおりだと思いますので、職業ライターの端くれとして、ちょっと違ったアプローチしてみます。パイカル復活、天宮の水晶、ギリシャが舞台といった今回の企画骨子を前提にし、レギュラーは全員出すといった制約の下に書かれた第二稿といった感じです。見た後の勢いだけで1日で書いてしまったので、細部詰まってません。異論も多々あると思いますが宜しったらご覧になってみてください。方向性が探れるかもしれません。では、以下、続きます。

「ルパン三世〜生きていた魔術師(IF)」

 アテネの高級ホテル。シャワーを浴びている不二子。その胸元には巨大な水晶。水晶に口付け。そのホテルに迫る何者か。乱れた長い前髪。シャワーを終えたバスローブの不二子。水気を押さえながら出立の支度を始める。ドアの前に迫る何者か。ノック。警戒する不二子。追い返そうとするが、何者かの手がドアノブをつかみ、高熱で溶かす。強引に入ってくる何者か。バスローブの下にブローニングを仕込んでいた不二子。消音。抜きざま撃つ。二発。全くひるまず近付いてくる何者か。ブローニングをつかんで溶かす。そのまま、その手で不二子の肩口に触れようとするが、不二子はベッドに倒れこんで避ける。不二子におおいかぶさる男の右手がシーツを焦がす。左手は水晶に手を伸ばす。「おまえには必要が無い。意味も分からず手を出すと火傷するぞ」「あなた……、生きていたの?」「死んだよ。ここにいるのは死人さ」逃げ出す隙をうかがっている不二子。「道連れを探している死人」「道連れって」「ルパン三世」男の掌から盛大な炎。

 炎と魔術がモチーフの独立オープニング。キャラクターの描かれたカードが燃え上がり灰になり再生するとか。

 ホテル。焼け焦げた部屋にアテネ警察の鑑識等。銭形、来る。居合わせたホテルの従業員に不二子の写真見せる。エレベータ、通路の録画ビデオを見ると、パイカルの姿があるが、銭形は知らない。この男ではなかったか、とルパンの写真を見せる。

 真夜中。港に停泊中のオリュンポス号。その地下で繰り広げれる賭け試合。ファイナルラウンド、五エ門VSモヒカンの巨漢。セコンド役は次元。隣にルパン。ルパンはつまらなそうに出ていく。「退屈な試合だ。結果は見えてる」試合開始。五エ門、一閃。
 潮風を浴びてるルパンの元に物陰から走り寄る誰か。裸足。ルパン、振り返らず「不二子か」振り返って驚く。焼け焦げたガウン、半裸で憔悴しきったの不二子。「何があった?」崩れ落ちる不二子を抱きかかえるルパン。

 アジト。バスタブに漬かって落ち着きを取り戻した不二子と、少し離れた脱衣所に座って話すルパン。その手には水晶。「こんな物に手を出すから、死人まで甦っちまう」「知ってるの?」「天宮の水晶だろ? 玄人なら手を出さねぇ」「これを集めたら何か起こるの?」「手に入れた奴は消えてしまうんだってよ。噂だけどな」そこに次元と五エ門が帰ってくる。「先に帰るなら言えよ」風呂から上がる不二子。臆せず着替える。うさん臭げな次元。目を逸らす五エ門。「優勝したんだろ?」「どうでもいいい話だ。手応えがなくて、つまらぬ」「ほれ、賞品だ」次元が取り出したのは……「天宮の水晶!? これがか? 返してくる」「返さなくてもいいよ。取りに来る」「誰が?」「パイカル」「パイカルだと? 奴ぁ死んだだろ?」「パイカルとは?」「ちゃちな手品師さ」「手強かった。俺達が相手になった奴らの中で一番」ニヤリとする五エ門。「手強い……」「で、なんで不二子がいるんだ?」「同じさ、前と」「ってことは?」気配に感づいた五エ門。表に駆け出す。「重機関銃は無いけど、斬鉄剣がある」「それでいいのか?」「良くない」次元とルパンも表へ。

 アジトの外。宙に浮いてるパイカルに驚いている五エ門。「江戸時代はびっくりするかもしれねぇが、二十一世紀じゃ大概の仕掛けにゃ驚かねぇぜ」機動隊仕様の耐火盾持ったルパン、次元はネットガンをパイカルに向けて撃つ。パイカルは滑るように空中を移動して避ける。「ガラス無し、吊りでも無いとなると……」手近の高見からパイカルに向かってジャンプする五エ門。斬鉄剣が空を切る。「立体映像か!」「やばい」振り向くと、不二子を抱えたパイカルがアジトから出てくる。「久しぶりだなぁ、世界一強かった男」「女を返してほしければ天宮の水晶を持って円形コロシアムまで来い」「進歩のねぇ野郎だ」パイカルの眉間を狙った次元のマグナムが火を噴く。不二子を抱えて、またも宙に浮くパイカル。「今度こそ!」斬り掛かる五エ門の剣を垂直軌道で避ける。「バックパック型のVTOLだな。ネタばれしてんだよ」「熱誘導弾だ!」スティンガー構える次元。ニヤリと笑うパイカル。背後でアジトが火柱をあげる。その上空に飛び去る。熱誘導弾は火柱で方向を狂わせ、ルパンらの方に戻ってくるが、五エ門が細切れにする。「何もそこまでしなくったってよぉ」「このままでは眠れぬ」あくびするルパン。「一眠りしたら、円形コロシアムに行くとするか」「ん」次元とルパンは、どこへともなく歩いていく。悔しそうに空を見上げている五エ門。「グズクズしてると騒がしくなるぞ」

 孤島。パイカルの地下基地。くつろいでいる不二子。「強引なところは昔のままね、坊や」「変わってないのは奴の方だ。それから……」「私もね」「いや、変わった。俺も変わった。変わってないのは奴だけだ」「悔しい?」「楽しいよ。生まれて初めて楽しいと感じている」「楽しい時間を長く続けたいと思わないの?」「不可能だ」「やっぱり変わってないのね」席を立つ不二子。

 アジトの残骸に訪れている銭形。瓦礫の下で電話のベルが鳴る。携帯電話を掘り起こす銭形。合成音声で告げられる「円形コロシアム」。

 クルーザーの船室。起き抜けの次元がベッドで寝ているルパンの元に来る。「やっぱり寝てねぇのか」ベッドに腰掛ける次元。「何が気になる。炎、空中浮遊、立体映像、どれも大したトリックとは思えねぇがな。……天宮の水晶か?」「そう。それが今回の最大の演目だ」「天宮の水晶七つ全て手に入れた奴は、どこかに消えちまうんだったよな」「消える……透明になる?!」

 円形コロシアム。先に乗り込んでいる五エ門。瞑想。パイカルが現われる。「ここはおまえの墓場ではない」声の方向を斬る。姿が無い。斬鉄剣がつかまれる。高熱を帯びる。束の布が燃え、ついに手を放す五エ門。空中に浮かんだ斬鉄剣が五エ門に斬り掛かる。サヤで受けとめる五エ門。「拙者が持たねば意味を為さぬ」「フン」地面に放られる斬鉄剣。「武士の魂を!」拾う五エ門。構えるが、相手の姿が無い。「真上だ、五エ門!」繰り出される炎を避ける五エ門。観客席に特殊グラスをかけたルパンと特殊スコープ付きのライフル構えた次元がいる。「見えるのか?」次元のライフルがバックパックを撃つ。「小細工抜きで決着つけようぜ!」目を閉じた五エ門が一閃。着地したパイカルの透明スーツを斬る。「からくりを知ってしまえば、つまらぬ相手だ。ルパン、あとはまかせるぞ」スタスタと、その場を去る五エ門。
 コロシアムで対峙するルパンとパイカル。掌をルパンに向けるパイカル。ワルサーを構えるルパン。炎。避けてワルサーがパイカルの手首に。小型火炎放射機の偽手首が飛ぶが、そのままパイカルは自分の銃を抜く(中国製の何か精度の高い奴かな)。「そう来なくっちゃね」楽しげなルパン。
 観客席で見物する次元。その横に現われる不二子。「さぞかし、いい気分だろうな。自分のために殺し合う男達を眺めるなんてよ」「私のためなんかじゃないわ。ルパンは私がパイカルの所から戻ってきても、ここに来た。パイカルは私が水晶を持って出ていっても追いかけて来なかった」「そりゃ、パイカルは透明スーツの製法さえ分かっちまえば用済みだったろうからな」「いいの。これだって指輪の一つには化けるわ」「自分で指輪を買うようになっちゃ、おめぇも終わりだな」「知らないの? 女は本当に欲しい物は自分で買うのよ」コロシアムを立ち去る不二子。「さて、そろそろ決着だな」
 空が曇り始める。弾丸が尽きたルパンとパイカル。脱いだ上着を腕にまいて盾にし、ナイフを抜く。接近戦になった瞬間、パイカルが口に何かを飲込み、息を吸い込む。「待ってたぜ」すかさず、パイカルの顔に向けて、ライターの最大炎を向けるルパン。火炎を吹き出そうとしたパイカルが躊躇した瞬間、全身が炎に包まれる。断末魔の悲鳴を上げて倒れるパイカル。そこに雨。倒れているパイカルに近づくルパン。「……とどめを刺せ」指でピストルの形を作って撃つ振りするルパン。「また新しい玩具が出来たら遊びに来な。楽しみに待ってるからよ」

 観客席を見るルパン。「お〜い、次元。不二子は?」「帰ったぜ、水晶持って」「うそ! なんで引き止めておかねぇんだよ! どっち行った?」「知ったことか」慌てて出口に向かうルパンの前に現われる銭形とアテネ警察。「不二子だな……」逆方向に逃げ出すルパン。コロシアムにパイカルの姿は既に無い。ニヤリとするルパン。「ルパンこっちだ」次元が手招きする先では、鉄格子を斬って新たな脱出口を作った五エ門がいる。逃げていく三人に殺到する銭形と警官隊。しかし、逃げていった三人はパイカルがアジトで使っていた立体映像機によるもの。

 アテネ空港。VIPルームで過ごす不二子に接近する老紳士。「天宮の水晶をお売りになりたいと言うのは貴女かね」「隠された価値はご存じね」「正当に評価しているつもりですよ」トランクの中のキャッシュを見せる。トランクを交換する二人。「これはおまけしておきましょう。後でご覧になってください」小箱を渡す老紳士。
 飛び立つ飛行機。機内。小箱の中には指輪。「ルパン……」トランクの中身は偽札。空港駐車場。飛行機を見送ってるルパンと次元。「気に入ってくれたかなぁ」「けっ。甘い、甘い。甘すぎる」「甘いからいいんだよ」「言ってろ」飛行機の消えた空を眺め続ける二人。END。

* 後記

 こうして書いてみると、やっぱりパイカルを甦らせる事自体、潔くない事だったと思いました。ラストの対決は肉弾戦では無く、トリック戦にして、決着も一発でつけるのが筋だとは思ったんだけど、「小細工抜きで〜」って台詞書いちゃったら、とまらなかったんだよね。天宮の水晶の特性に誘雷性の伏線張って、落とそうかと迷ってた名残が少しあります。五エ門の斬鉄剣のくだりとか、別なこだわりまで入ってしまってるし。やっぱり、素直には書けないものです。ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。この場をお貸しいただいたぷらりさんに感謝いたします。


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