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Re: 私の考え


投稿者 りゅうのすけ 日時 1998 年 8 月 01 日 11:07:19:

回答先: Re: 「クローン」ファンへ 投稿者 ピンクネコ 日時 1998 年 7 月 30 日 08:40:05:

こんにちわ。私も「クローン」が大好きなので、一言書かせてください。
こういう「よく分からない」部分があるところが、この作品の魅力のひとつですよね。

「実際、クラシックだよ、お前は」のせりふは、
次元:行くな、ルパン!
ルパン:俺は、夢盗まれたからな。取り返しに行かにゃ。
次元:夢ってのは、女のことか。
ルパン:実際、クラシックだよ、お前は。

というところで出てくるんですよね。だからここで言う「クラシック」は、「(男の)夢イコール女」という、いかにもありふれた、とういか、古典的な次元の考えを言っているのではないでしょうか。

ルパンが言う「夢」には、やっぱり不二子も入っている感じはしますが、でもそれだけではなく、自分のクローンを作られたルパンが、自分こそが本物のルパン三世であることを確認するために、マモーと対決しに行くのか、などと思ったりするのですが、やっぱり良く分かりません。

ですが、ルパンが「夢」という言葉で何を指しているのかということからはちょっと離れますが、すごく面白いのは、マモーがルパンの潜在意識を調べるところで、マモーが「ルパンは夢を見ない。これは神の意識が白痴のそれに他ならない」というようなことを言うところ。(ちなみに、ここで言う「夢」は、表面的には、睡眠中に見る夢のことを指しているのでしょうが、希望という意味での「夢」も含まれているのではないかと気がしています。)マモーは自らが神になろうとしたが、なれなかった。永遠の時間を支配しようとしつつも、支配できなかった。ルパンは神になろうとも、永遠に生きたいとも思っていない。そのときそのときを自分の欲望にしたがって生きているルパンが、「神」の意識を持っている(「白痴」かもしれないけど)。神になろうとしてきたマモーを、ある意味でルパンは軽々と越えてしまう可能性を持っていて、だからこそ、それを知ったマモーはこの場面でルパンを殺そうとするのではないか、という気がする。そして、マモーに恐れを感じてルパンについていかない次元とも、マモーの目に引き寄せられて意識を失ってしまう不二子とも、斬鉄剣が折れたことで意気消沈してしまう五右ェ門とも異なる存在として、ルパンは描かれる。

ルパンは失敗もするけれど、何でもできてしまう、言ってみれば「神」のような存在でもある。「神」は自分で何でも実現できてしまうから、「夢」を見ることはない。しかし他方、「神」は、永遠の時間を生きる孤独な存在でもあるし、その存在は人間が信じるかどうかにかかっていて、ある意味でその存在は希薄なものでもある。

仮に「神」が「夢」を持つとしたら、それは永遠に生きることはできなくても、他者との関わりを持ち、不可能と不確定性に満ちた「現実」世界に生きることではないだろうか。もともとルパンは人間だし、自分が「神」の意識をもっているなんということを自覚はしていないわけだけれど、この作品の中で、マモーを倒すことによってルパンは「神」になることを否定、または放棄して、不可能に挑戦し、次元達と泥棒稼業に精を出し、ときには仲間割れもし、失敗もし、銭形に追いかけられ、女に翻弄されるという、およそ高尚とはほど遠いが、そこに自分自身の存在を見いだせる「現実」を選んだのではないか。マモーが「神になれなかった男」なら、ルパンは「神にならなかった男」と言えないだろうか。

「Theルパン三世FIles」で、高橋実氏が、「・・・彼(旧ルパン)は最後にはいつも計算通り勝利する、世界の原理を握る神の如き存在だった。そんな彼も時には計算外の不確定要素に踊らされることもあった。例えば、それは峰不二子に象徴される女という存在だ。すべての努力が女の裏切りで覆されたとき、ルパンはただ赦した。ただ微笑んだ。内面の深い傷を見せることもなく。だが、彼は同時にそれを愉しんでもいたのだ。・・・」と書いているが、「クローン」の映画で、ルパンが取り戻しにいった「夢」とは、不二子を含む、自分にとっての不確定な現実世界、なのだろうか。

はあ。長々とわけのわからないことを書いてすみません。自分でも深読みしすぎって感じがします。結局のところ、やっぱり「夢」の意味は私もよくわかりません。完全にはわからないからこそ、ルパンのキャラクターの深さのようなものが感じられて、面白いような気がしています。ルパンってやっぱり常人のレベルを超えてしまっているところがあって、私なんかには理解できない何かを持っていると考えるのが私は好きなんです。(何といっても「正体不明の」大泥棒なんだし。)おそらくルパン本人にも完全には分かっていないのではないか・・・という気もします。ルパンは、洗練されたなかにも、その裏側にのぞく虚無的でどす黒いものを持っていると、旧ルパンのおおすみ正秋監督が言っていますが、このルパンの内面の、おそらくルパン自身も把握しきれない「どす黒い虚無」が、「クローン」に出てくるルパンの「夢」を見ないという潜在意識、モニターに映し出される「真っ白い虚無」に通じているような気がしてなりません。考えてみれば、「クローン」の脚本を書いた大和屋竺さんは、旧ルパンから脚本を書いている方なんですよね、「魔術師と呼ばれた男」とか。(ちなみに、何だかわけのわからない力を持った敵が出てきて、ルパンはそれを何とか合理的に説明しようと試み、対決する、という構図は、この2作品はすごくよく似ていますね。)ルパンにはどこか、すごく虚無的な、そら恐ろしい部分、それはルパン本人にも、ましてや私なんかにはとうてい分からない部分があって、そういうルパンの内面的な深さが「クローン」では感じられるような気がして(勝手な解釈かもしれませんが)、それもこの作品が好きな理由のひとつです。そんなのルパンじゃない!と思われる方も多いでしょうけれど、ルパンファンが100人いたら、きっとそこには100個の異なるルパンの像があると思うので、お許しください。でも、こういうハードなルパンだけじゃなくて、新ルパン以降のルパンも好きです。
それでは長々と勝手なことばかり書いて失礼いたしました。


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