作画を二人で語ろう(仮)
第4回『新ルパン その2』

池本
そして…新ル中期のもう一つのトピックは「スケートボード殺人事
件」に始まるテレコムの参加ですね。「スケートボード」は新人集
団を実戦投入した回なので完成度は落ちますが…それでも、ルパン
と次元の護送シーンなど、見るべき箇所はいくつかあります。

くま
「スケートボード殺人事件」はいくつか素敵な絵がありますね。

池本
続く「星占いでルパンを逮捕」「とっつあん人質救出作戦」「復讐
はルパンにまかせろ」辺りは内容がやや地味だったりで埋没しがち
ですが作画に注目すれば手堅い仕事がされていて結構拾い物です。
「怪奇鬼首島に女が消えた」はちょっと見劣りがします。

くま
多少キャラ崩れしていますが、それに目をつぶれば平均水準より上
ですね。

池本
そのテレコムの魅力が爆発するのは新ル中期のどんづまり、第98
話「父っつあんのいない日」第99話「荒野に散ったコンバット・
マグナム」の二連打ですね。とにかくまぁ動く動く。そしてまたそ
の動きが実に気持ちいい。画面の密度や演技の秀逸さなど文句のつ
けどころが無い。…強いて言うなら「いない日」はところどころヘ
タるとこがあるなぁとか、銭形の遺体が川に落ちる件りの作画は雑
だなぁとか…この辺の、80年代的作画に通じる作風って、くまさ
んはまぁ好きなんだろうけども。

くま
80年代的作画をやってたのは、やはり岡本健一でしょうか?友永
和秀原画の回でほぼ確実に参加していて、似たような雰囲気の画面
もちらほら見受けられましたが…。ところで「父っつあんのいない
日」はOHプロだったように記憶していますが?

池本
あ、そうか!メンゴ。『友永和秀』の名前で咄嗟にテレコムと勘違
いしちゃった。この時点ではまだOHプロ所属でしたね。

くま
同じOHプロ回で、原画のメンバーが全く同じの「マダムと泥棒四
重奏」も好きですよ。珍しくストーリーのことも触れさせてもらい
ますが(笑)話もいいし、それに見合った作画が為されている。B
パートのミュージカルの件りが恐らく友永和秀ですね。

池本
パワーショベルの極端なパースとかが特徴的ですね。「マダムと泥
棒」は旧ル後期の路線を拡大解釈した好編だと思います。ブロード
ウェーとかと同じく、新ルの『何でもアリ』な無節操さが上手く機
能した稀有な例ですね。

くま
「いない日」も触れておくと火葬場のシーンは素晴らしい!この回
を初めて見たのは自分が中学の頃でしたが、その時から友達に見せ
ては説明していた記憶があります。もちろんその頃は誰がどこのパ
ートをやってたなんて知りませんでしたけど。

池本
僕は中盤のヘリ襲来の辺りを特に推しますね。中でも…ルパンと次
元が並んで走ってるとこで、ルパンが一瞬遅れるタイミングとかが
無闇に気持ち良くて。

”セカンドシリーズ”イラスト
by 池本 剛
”セカンドシリーズ”イラスト by 池本 剛
くま
面白い走り方してますよね。あのタイミングも芸が細かいです。
そしてそのまま「荒野に散った」へと続くわけですが…この回はス
トーリーにやや穴がありますが、コンテと作画で切り抜けてますね
。Bパート後半はスピード感あふれる展開ですね。動きは勿論です
がカットチェンジが優れものです。コンテ・演出の吉田しげつぐの
名前を初めて意識したのがこの回だなあ。
演出の違いってのは今でも分からないですが、テレコム+吉田しげ
つぐ回が優れてるのは『作画を魅せることに優れている』コンテな
のではないかと思います。

池本
吉田しげつぐの演出は手堅いんですよね、良くも悪くも。きっちり
やってます、みたいな。オーソドックスな事をきっちりやるのって
実はかなり難しい事で。
とにかく…二本ともこれOHプロ、テレコムが作画してなければ、
ここまで面白くはなってなかっただろうという気がして、つくづく
アニメの肝は『まず画面』だなぁと思います。だからまぁテレコム
の参入があったから良かったようなものの、もし仮にテレコム不在
だったとすれば、この先のシリーズ後半はさぞかし見る影も無い状
態になっただろうなぁと思いますね。

くま
実際テレコムが後半再び参加するまで、目も当てられない回もあり
ますからね。ちゅうわけでその後半に行ってみましょう。
後半になるとOHプロ回が何故か無くなり、あまり完成度の高くな
い窪秀巳、小林一幸回が増えてしまい、パワー不足な感が拭えませ
ん。やはり見所は終盤のテレコム回に絞られるかと思います。
私はまず「地獄へルパンを道づれ」を推します。これも高畑回です
が…やはりシャープな作画として見ごたえがあります。ピラミッド
の中を走り回る一連のシーンは多分児玉幸子だと思います。この人
が一番高畑作画を受け継いでるかな~と勝手に判断しました。あと
はモグラ叩きの件り、ルパンがワイヤーを取り出すシーンもなかな
かいい感じです。Bパート後半の次元がマグナムを取り出すカット
もいいです。後の「次元に男心の優しさを見た」の青木パートと比
較すると面白いかも。

池本
児玉幸子ってのが児玉兼嗣の奥さんの神村幸子なんだっけ?くまさ
んに指摘されるまで気付かなかったなぁ。この当時から関わってた
んだね。
「地獄へルパンを」は何と言うか…内容に重い部分・暗い部分があ
るから、その意味で高畑順三郎という人選はどうなのか?と思うん
です。高畑作画のシャープさとか軽みみたいなものと、ストーリー
の重さが相性が良くないんじゃないかなぁ…と。この人は軽快なア
クションとかが映えるから。

くま
なるほど、私は閉じ込めれられた空間でチャカチャカ動くのが好き
なので気になりませんでしたが、この作品が『並』程度に見られる
のはそこか。新ルは『作画とストーリーが合ってない』『作画が良
くてシナリオが今いち』『シナリオ良いのに作画ダメ』『どっちも
ダメ(汗)』という感じで分類することが出来ると思いますが、「
地獄へ~」は『作画とストーリーが合ってない』部類かな?

池本
『どっちもいい』を忘れとるがな(笑)ま、それはそれとして…。
「次元に男心の優しさを見た」は所々ヘタってますが…まず青木悠
三担当の戦闘シーンが秀逸です。サンドラが官邸に潜入しようとす
る件り。原画に比重をかけたリミテッド的な作風が青木悠三の特徴
だけど、動かし方や飛躍、タイミングが絶妙なので「気分出てるな
ぁ~」となるんですよね。青木原画以外の部分だと主にホテル内の
場面も渋くていいですね。手術のシーン辺りの、煙草の灰が落ちそ
うになってる次元の横顔、なんてのが特に印象的で。こういった印
象的な『絵』が青木悠三の持ち味で、新ルOPの’80バージョンな
んかがその極め付け。あれと’78の歌詞付きバージョンと旧ルの第
1バージョンは屈指の名OPですね。

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